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手掌多汗症の交感神経遮断術の副作用


投稿者名:日出子

タイトル:交感神経遮断術の後にアレルギー症状がでます


 

初めてご相談させていただきます。28歳女性です。
お忙しい中恐縮ですが、過去ログに類似例が記載されていなかったので、ご返答頂ければ幸いです。

今から7年ほど前、某大病院にて手掌多汗症との診断を受け脇の下の神経をブロックする手術を受けました。
現在掌からはほぼ発汗はありません。首から上の発汗はほとんど無くなると説明を受け、普段はその通りです。
代謝発汗に関してはその医師より説明を受け、背中やお腹の汗に関しては開き直っています。(相当ひどいですが。10分歩くと下着が絞れます。足汗も大量です。サンダルは履けません)

それ以来、体質が変わってしまったのか、主にチーズ、生クリーム、バターなどの乳脂肪分の高い物、ジャガイモ、サツマイモ、かぼちゃ、マメ、栗など芋系のホックリした感触のあるもの他、チョコレート、あんこ、などを食べると、出ないはずの頭部と首から冷や汗(ねばっこい)が止まらず、また全身に鳥肌が立ちます。
さらに、かいた事の無い寝汗を大量に毎晩かくようになりました。布団が濡れます。

寝汗に関してはもう開き直れと思っているのですが、アレルギーのような症状だけが解せません。

こういったケースは他にもあるのでしょうか。
また、手術によりアレルギー体質になったという事なのでしょうか。

鳥肌と冷や汗位で気分が悪くなるなどは無いのですが、検査に行ったほうがいいのかどうか悩んでいます。

ご返答頂ければ幸いです。

 

投稿者名:五味院長

タイトル:交感神経遮断術の副作用について



日出子さん。
実は、このHPでは、手のひらの多汗症に対する「交感神経遮断術」についてのコメントは今まで意識的に避けてきました。
その理由は、この手術が「諸刃の刃」であり、人によっては非常に恩恵がある一方「代償性発汗」という新たな悩みで、手術以前より悩んでしまう人がいるからです。

しかも、その代償性発汗で悩む人が多いのです。当院のHPへ投稿する人の数からの印象では、「多すぎる」と言った方が正確かもしれません。

ここで、まず手掌多汗症の神経ブロックの仕組みについて説明しましょう。

手のひらの汗は、脳の視床下部にある発汗中枢が精神的な興奮により交感神経に(暑くもないのに)「汗を出せ」と指令することが原因です。
視床下部からの指令は電気刺激となって、まず脊髄の中を走る中枢神経を通り胸椎まで下ると、脊髄を出てから一旦、交感神経節(幹)というセンターに集まり、そこから抹消神経を経て手のひらの汗腺に達して汗をかかせるのです。

神経ブロックは、この脊髄を出たばかりの神経節(幹)の部分を、脇の下から胸腔鏡という小型カメラを入れて、拡大画像を見ながら遮断してしまう方法です。

遮断の方法にはいくつかあります。
鋭利な刃物で「切断」する方法、電気メスで「焼却」する方法、直接神経を切らずにクリップで「挟む」方法などです。

神経ブロックは、発汗を刺激する神経の根元を直接「絶つ」わけですから、非常に効果があります。
NTT東日本関東病院の統計では、90%の人が「完全にとまる」「ほぼ止まる」状態になるそうです。

ただし「手のひらは・・・・」という条件つきです。

その条件とは、「手のひらは減るが、他の場所は増える」ということです。手のひらの代わりに背中、太もも、足など主に下半身に異常に汗が増えるのです。
いわゆる「代償性発汗」です。これも関東病院の報告ですが、なんと96%に見られたということです。

手のひらに汗に対する効果という点から見ると、神経ブロックという手術法は、手掌多汗症の治療法としては、きわめて有効な方法と言えるでしょう。

ただし「死ぬほど悩んでいる人には・・・・」という条件つきです。

つまり、この治療法はなにかと「条件」がつくのです。
それだけ、治療法の選択には慎重の上にも慎重になれ、ということです。関東病院でのアンケートによると「受けないほうがよかった」と後悔している人が2%いるそうです。

2%という数字は、普通の統計ならたった「2%しか」ないでしょう。
でも、今まで私の医院にメールで寄せられた代償性発汗の悩みの「深刻さ」を考えると、私の印象は「2%も」ある!です。

新たに、死ぬほど悩む人が2%も出現するのです。

このように今まで私のHPに寄せられたさまざまなケースを総合的に判断して、ここからは神経ブロックの専門家ではない私の個人的なアドバイスです。参考程度にしていただいて結構です。

仮に、あなたが、手にひらの汗のために、「人と握手ができず、営業の仕事を辞めなければならない」「楽器がさび付くほど汗が出て音楽家として障害がある」「答案用紙がぬれて、試験が受けられない」等の、生きるか死ぬかというほどの悩みなら、他の部分の汗と天秤にかけてもメリットがあるかもしれません。
そのような人なら、専門家と十分相談の上、自己責任で治療を受けるという判断するのもよいでしょう。

しかし、あなたが、死ぬほど悩んでいるけれど、万が一の代償性発汗の辛さに対しての「覚悟」がつけないようなら、また、自分の選択に対し全てを受容できる自信がなようなら、
神経ブロックの手術でも、「切除」や「焼却」ではなく、チタンクリップで「挟む」方法をお奨めします。
この方法なら、万が一、代償性の発汗が予想を超えて辛い場合にも、再手術でクリップを取り除くことで「以前の状態」に近い状態に戻る可能性があります。
(クリップによる神経ブロックの手術は昭和大学の藤が丘病院で行っています)

次にあなたが、「なんとなく不快である」とか「手のひらの汗が止まれば快適だろう」という程度の悩みなら、体にやさしい方法から選択するのがよいでしょう。

まず、第一は、「自律訓練法」です。手掌多汗症は「精神性発汗」と言われるように「心に汗をかく」状態です。
自律訓練法で「心の汗」をかかないようにすることは非常に有効なのです。この方法は専門書などを読めば自分だけでもできますが、心療内科等の専門機関で教わるのもよいでしょう。

第二の選択は、塩化アルミニウムなどの制汗剤を使いながら、同時に、「ボトックス」の注射を手のひらにすることです。
ボトックスは効果が一時的ですが、「試験の時だけ」とか「重要な仕事の時だけでも」汗を抑えたい、という人なら意味があるでしょう。

これらを試みた上で、やっぱり自分は「汗が減少することが人生に意味がある」と決断した人は前述の交感神経遮断術を考慮してもよいでしょう。

手のひらの汗の治療法は、まず安全な方法から進めるのが正しい選択と(私は)考えています。また、年をとると自然治癒する傾向があることも忘れてはなりません。

そして、ここからはあなたのアレルギー反応に対するお答えです。

おそらく(神経ブロックの専門家ではないので正確にはわかりませんが)あなたのアレルギー症状は、手術とは因果関係がなく別な原因があるかもしれません。

しかしもし、関連性があるとしたら、私は次のように考えます。

汗をかかせる交感神経は「自律神経」と呼ばれるものです。
ここでの「自律」という意味は、「自立」つまり「独立している」という意味だけでなく、「自分の意思のままに、自分らしく働く」という意味が含まれているのです。
交感神経だって、他人(医者)から切断やら、焼却やら、クリップなどされないで、自分の意志のままに神経らしく働きたいのです。

誰だって、他人から「自分らしく生きる」ことを否定されたら、「拒絶反応」を起こすでしょう。
同じことが、あなたの神経に起きていると考えることはできないでしょうか?

交感神経が活発に働き、手にひらにたくさん汗をかいていたのは、あなたの、そしてあなたの交感神経の、自分らしい「個性」であったのです。
その個性を手術で抑えられてしまったのです。
そのことへの「拒絶的反応」「防御的反応」です。
つまり神経が手術に文字通り「アレルギー」を起こしたのです。

あなたは、代償性発汗には「開き直っている」と表現されていますが、本当は完全には受け入れていないのではないでしょうか?
自律神経を、最終的にコントロールするのは、あなたの心です。
あなたの心が、手術を受けたことを100%受容していないなら、意に反して機能を抑制された交感神経だって、立場がないでしょう。反抗だってしたくなることでしょう。

私はアレルギーの原因はあなたの心にあると思います。
あなたの自由な意志で手術を受けたのですから、今はそのことをすべて受け入れるべきです。
あなたの心が自律するなら、自律神経も正常に働いてくれると思います。

「自己受容」――これがあなたのアレルギー症状の薬だと思います。

 

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