わきが多汗症研究所……わきが・体臭・多汗 心と体の研究室

気になる“におい”のメカニズム その1

 


 私のクリニックは少々変わっています。

 待合室のどの患者さんも病気には見えないのです。

 でも元気なことは元気そうだけど、みな何か自信なさげです。

 そうなんです。実はこのクリニックの患者さんたちは、頭が痛い、風邪で具合が悪いといった病気ではないのです。「悩み」という病気にかかっているのです。

 たとえばそこのA君ですが、彼の悩みは体臭です。「僕は体臭が強くて人に嫌われている」というのが彼の悩みです。隣のB子さんは「目つきがきつくて損をしている」、向かいのC子さんは「毛深いのが恥ずかしい」、D子さんは「交通事故の傷を目立たなくしてほしい」、E君は「オチンチンの形が友だちと違うのではないか」などなどです。

 十人十色とは言い得たもので、悩みもさまざまですが、私のクリニックの患者さんには大きな共通点があります。それは、皆自分の体を他人がどう見ているのか、感じているのか、自分のボディイメージについて思い悩んでいるのです。こうした悩みは、リウマチで足が痛い、貧血で疲れやすい、喘息で息が苦しい、といった病気でお悩みの方には、実に贅沢な悩みに思えるかもしれません。

 しかし当事者にとっては、悩みゆえに友だちもできず、外出も不安で、ひいては「生きていることさえつらい」という人もいるのです。それではたとえ身体が健康でも、人間らしい生活はできません。

 人間は身体の健康と同時に心の健康も必要なのです。

 

 

「カラダの手あて」と「心の手あて」

 

 私は心療外科医です。「心療内科」ならいざしらず、「心療外科」とはこれいかに?

 耳慣れない言葉ですね。それもそのはず、心療外科とは私が勝手に命名した科目なのです。

 ただし、決して言葉の遊びではありません。

 私は本来は形成外科医です。しかし、日々の診療を重ねるなかで、どうしても外科の枠組みのなかでは手を尽くしきれない場面に、幾度となく立ち会ってきました。外科の手法だけでなく、胸の内にまなざしを投げかける、いわば「心」の診療が必要なのだと、そのたびに痛切な想いに駆られたものです。

「心療外科」の名前は、そうした「診療」の現場から生まれました。

 いまの話を、もう少し実例でご説明しましょう。

 12歳の少女が母親に付き添われて来院しました。夏とというのに長袖のワンピースを着ています。この女の子は乳児のときに火傷をおいました。胸背部から腕の先にかけて、広く瘢痕性のケロイドが残ってしまい、そのために夏でも半袖になれないのです。ケロイドは、軽いものならステロイドの軟膏や注射で治療しますが、高度のものは、正常な皮膚をケロイド部分に移植する植皮術が中心になります。

 しかし、このとき私は、形成外科医として我が身の無力に行き詰まるばかりでした。なぜなら、彼女はすでに何度も植皮をしていたために、もう移植するための正常な皮膚がほとんど残っていなかったのです。外科手術では、もはやこれ以上の治療はできません。この女の子は、これからずっとケロイドとともに生きていくのです。

 そして、もし彼女が、見た目にきれいか、みにくいか、というモノサシでのみこれから生きていくのなら、その一生は価値の低いものになってしまうでしょう。

 たしかに美しいこともひとつの価値です。でも人生の意味はそれだけではありません。人間はひとりひとり個性を持っています。そしてそこに価値があります。ケロイドという事実を含めて、彼女がひとりの人間としてかけがえのない存在であることには変わりはないのです。

 ならば私は、ケロイドの少女になにができるか?

 さしあたって軟膏やケロイドの予防の内服薬を投与して、ほんのいくばくかの希望をもたせることも必要でしょうが、もうひとつ、人間の値打ちは外見だけではない、あなたが今ここに生きていることに意味があるのだと、それを分かってもらうために、時間をかけてでも心の深みへと手をさしのべることも必要なのです。

 

 このように、自分の身体や存在に負い目を持ち、その悩みにあてどない人々が扉を叩くところ、それが、形成外科の手法をふまえつつ、かの人たちの心の傷にそっと手を当てる「心療室」なのです。

 

 

「クサイ」と言われること

 

 あなは他人から「クサイ」と言われたことがありますか? 直接言葉でなくても、話の最中に相手が不意に鼻に手をあてた。臭そうに眉をひそめた。せき込んだ。そんな経験はありませんでしたか?

 そのときあなたは、自分の身体から何かイヤな臭いでもしているのではないかと、内心かなり動揺したのではありませんか?

 体臭で悩む人の多くは、自分で自分の臭いがイヤだと悩んでいるのではないのです。自分の臭いが他人に迷惑をかけているのではないか、そういう責任を感じて悩んでいるのです。

 

 例えば、身長や鼻が低くても、そのことで他人に迷惑がかかると悩む人はいないでしょう。

 太っているだと足が短いだのといったことは、しょせん人間の価値のごく一部であって、それを他人にどう思われようと、気にしなければ関係のないことです。

 でも、他人から「クサイ」と言われて「それが悪いか」と開き直れる人はどれほどいるでしょうか。責任感の強い人であれば、「いますぐここから逃げ出したい」「できるものなら消え失せたい」と、そこまで思い詰めるものなのです。

 

 「クサイ!」の一言は、相手の人格を全否定してしまうほど、きつい言葉なのです。

 

 


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