ワキガ多汗症研究所……ワキガ・体臭・多汗 心と体の研究室

アポクリン汗は何のために存在するのか?

 


 アポクリン汗の役目を考える前に、アポクリン腺に関する素朴な疑問をあげてみましょう。

 

(1)ワキの下に多いのはなぜか

(2)他の場所(外耳道、乳首の周囲、陰部など)にも存在するのはなぜか

(3)体全体に散在せず、まとまって局在するのはなぜか

(4)有毛部にあるのはなぜか  

 

 これらの疑問を解く糸口は、霊長類としての人間の進化の過程にあるように思えます。当たり前のことですが、人間の先祖はサルです。人間がサルであった頃には、四つ足で歩行し、全身が毛でおおわれていました。

 また、求愛期間も生殖可能なある一時期に限られていました。したがって、子孫を残していくためには、性周期の短い期間に、メスがオスを魅きつけるための性的な信号を送る必要があったのです。それがアボクリン腺から発するにおいでした。そのにおいは、主に生殖器周囲のアポクリン腺からのものでしたが、当時は全身にあったアポクリン線からも出ていたに違いありません。

 このように、進化前の人間のアポクリン腺は、異性を魅きつけるフェロモンのような役割をしていたのです。

 ところが、体の表面から体毛が脱落し、直立歩行を開始し、性的結合もある一定期間だけでなく、一年中いつでも可能となると、アポクリン腺の役割も大きく変化していったのです。

 まず、直立することで、オスとメスの結合は正面対正面と変化しました。それにともなって、性的信号を発する場所も、主に肛門周囲から、陰部前面(恥毛部)、乳首周囲、腋窩部(ワキの下)、外耳道など、体の前面に移りました。とくに、顔と顔を対面させる人間の性的関係においては、腋窩からのにおいが、性信号としては効果的なのです。

 しかし、さらに進化が進むと、性的信号としてのにおいの存在は、バストや口唇、さらには全身のプロポーション、顔立ちなどといった視覚に訴えるものにとって変わられてしまったのです。それにともなって、アポクリン腺はさらに退化し、今ではワキの下や外耳道などに、わずかに残存するのみとなってしまったのです。

 においが性的輿奮をおこす主役から退くとともに、人間の喚覚自体も退化していってしまいました。

 このように、大古の人類にとって、アポクリン腺からのにおいは、性的にたいへん刺激的であり、子孫を残し、生存を続ける上で重要な意味をもっていました。しかし、社会的・文化的背景もあって、今日では、そのにおいそのものが悪臭として悪物扱いされてしまっているわけです。

 


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